2024_アジアカップ(12)・・決勝コラムのツモリではあったけれど・・ソコで見出したコトも含め、やっぱり、人とボールの動きというディスカッションを深めていくことにしました・・(ヨルダンvsカタール, 1-3)

あっ、盗まれた~っ!!

そのとき、心のなかで、そんな叫びが響きわたった。

そう・・

イラン対日本の後半10分。

イラン、モヘビに同点ゴールを流し込まれたシーンだ。

盗まれたのは、板倉滉の「視線と意識」。

その直前、イラン、アズムンが、まさにスーパー・ワンタッチ・トラップを魅せた。

そしてアズムンは、完璧フリーで、シュート、パス等、どんなプレーでも出来るシチュエーションを創りだした。

それが、勝負の瞬間だった。

そのアズムンの左で、最終勝負アクションを起こそうとしているモヘビを、「イメージング・マーク」していたのは、板倉滉。

一瞬、アズムンの素晴らし「過ぎる」、スーパーなワンタッチ・トラップに、視線と意識が「吸い寄せられた」と、感じた。

そして、そんな板倉滉の「視線と意識のズレ」を感じていた(!?)、モヘビが、そのスキを突くように、爆発ダッシュを仕掛けたのだ。

もちろん板倉滉も、その「爆発」を予知していた。

だから、彼もまた瞬間的に反応し、これまた爆発スタートを魅せたのだけれど・・

結局は、背後の決定的スペースに走り込まれてしまうんだよ。

わたしは、そんな「ボールがないところで勝負を決まってしまった」最終勝負シーンを思いだしながら、決勝マッチを観ていたっちゅうわけだ。

そう、この両チーム(ヨルダンとカタール)の最終勝負は、まさに、個の勝負「だけ」に大きく偏っているんだよ。

たしかに、両チームともに、優れた「個の才能」を有している。

それでも、「それだけ」じゃ、決して、世界トップには追いつけない。

たしかに、ボール「は」動くよ。

でも、それは、足許パスばかり。

ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションなんて、希の希。

もちろん、ボール奪取プロセス(守備)は、徹底しているし、とても力強く、ハイレベル。

この「徹底」こそが、トップネーションと追随カントリーの「差」を縮めたといっても過言じゃない。

2年前の、カタールWMで大躍進を遂げたモロッコだけれど・・

彼らは、優れた組織ボール奪取プロセス(守備)のエッセンスを、徹底的に、チーム内で「共有」させたんだ。

それだけではなく、次のスペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)でも・・

「個の能力を最大限に活かし切る・・」ことを武器に、勝負強さを発揮した。

監督は、ワリド・レグラギという、モロッコとフランスの国籍を有するプロコーチ。

彼は、W杯が開幕する三ヶ月前までモロッコ代表の監督を務めていた、「あの」ヴァイッド・ハリルホジッチが、解任された後に監督に就任する。

そのレグラギの(選手に対する!?)発言で、こんな興味深いモノがある。

・・我々は、ポゼッションをするためではなく、勝つために、ここにいる・・

ちょっと要約しすぎだけれど・・

とにかく彼は、しっかり守り、鋭く仕掛けていく(堅守速攻!?)コトを旨とするチーム&ゲーム戦術(要はトーナメント戦術)の徹底を志向し、大きな成功を収めたっちゅうわけだ。

その後、昨年のドイツ国際会議で、モロッコについて、盛り上がったのだけれど・・

要は・・

・・サッカーの進化&深化は、トーナメント戦術ではなく、あくまでも、「組織と個」の継続的インテグレーションにあり・・っちゅうコトさ。

だからわたしは、今回のアジアカップでの主要ディスカッションテーマを、人とボールの動きと「その優れたリズム」ってな視座にしたんだよ。

たしかに・・

板倉滉は、「そのとき」は、やられてしまった。

そして、そのコト(心理的なダウン・・自信と確信レベルの大きな減退!?)によって、彼のパフォーマンスは、目立って落ち込んでいった。

「あの」優秀な板倉滉でも、そんなふうに、簡単に、自信と確信レベルをダウンさせちゃうんだよ。

まあ、私にとっては・・

究極の「心理ボールゲーム」であるサッカーの面目躍如・・的な、現象で「も」あったわけだけれど・・さ。

あっ、不確実であるからこその、究極の「組織スポーツ」ね・・

とても「優れた能力」に恵まれている板倉滉に対しては・・

「あれ」を、これ以上ないほどの「学習機会」として活用して欲しいと、願って止みません。

あっと、決勝・・

皆さんもご覧になった通り、両チームともに、堅いボール奪取プロセス(守備)を絶対ベースに・・

カウンター気味に、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)をブチかまそうとしていた。

そう、それも、「個の勝負」を前面に押し出してね。

それが、「天才肌」の、アフロ・アフィフが、PKでハットトリックを達成する結果となった!?

わたしは、そんな決勝を観ながら・・

・・まあ、アジアカップやW杯は、基本的にはトーナメントだから、そんなチーム&ゲーム戦術も、アリだよな~・・

・・それでも、日本、イラン、韓国には、そんな、苦々しい「後ろ向きタクティクス」を、美しい質実剛健サッカーで、ブチ破って欲しい・・

・・そう、そこが、トーナメントの場であったとしても、ね・・

日本の「J_リーグ」・・

そこでも、短期的な「勝ち点」をゲットするような戦術サッカーをするチームが出てくるでしょ。

もちろん・・

理想的な、美しい質実剛健サッカーを志向したいけれど、それじゃ勝つのが難しいし、オレ自陣が「クビ」になっちゃう。

そう考えるプロコーチもいるに違いない。

実際、求めたモノを得られず、道半ばで・・ってな憂き目に遭ったプロコーチも多いのは知っている。

それでも私は・・

そう、様々な意味を内包する「バランス感覚」を研ぎ澄ませて欲しい・・って思うんだよ。

大志を抱きながら、理想を追い求めるプロコーチたち。

そんな彼らが、「理想と現実のバランス」を、うまく執りながら、成功を収められるコトを、願って止みません。