The Core Column(57)_勝負は、目立たない小さなトコロで決まる・・イメージング能力と意志こそが(その2)
■クリエイティブなムダ走り・・
前回コラムの「例示」だけれど、その最初のケースでは、チームメイトのハードワーク(忠実でダイナミックなチェイシング)が、「本物」のムダに終わってしまった。
私は、よく、優れたサッカーは「クリエイティブなムダ走りの積み重ねだ・・」と書く。
でも、このケースでのチェイス&チェックは、チームメイトの守備アクションが連動しなかったことで、まさに本物のムダ走りに終わってしまったんだよ。
次につながる(積み重ねても意義がある!!)ムダ走り・・
このケースでのそれは、確実にインターセプトできたり、相手トラップの瞬間をねらってアタックできるような、ボールがないところでの忠実な寄せ(≒守備ハードワーク)だった。
それこそが、チェイス&チェック同様に、次につながる価値あるムダ走りなのである。
それを生み出す原動力は、言うまでもなく、守備の連動アクションを生み出すイメージング(最終勝負イメージの脳内描写)と意志。
そう、積極的に勝負イメージを描き、強い意志と勇気によって、忠実な守備ハードワークを繰り出していくのである。
それがあれば、たとえパスがこなくても(インターセプトやトラップ瞬間のアタックが叶わなくても!!)、その有意義なムダ走りが、着実に、次の成功の礎(いしずえ)として、脳内のイメージタンクに蓄積されるだろう。
ということで、前回につづく「小さなトコロでの攻防」コラムでは、イメージングと意志(勇気)がグラウンド上に投影された結果としての「創造的なムダ走り」というテーマから入ることにした。
■チト脱線・・小さなトコロでの攻防は全ての「攻守」局面勝負における主役・・
このコラムでは、相手のドリブル突破を迎え撃つ「1対1の勝負」ではなく、あくまでも、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションと対峙する連動ディフェンスにおける失敗(ミス)という視点でディスカッションを展開している。
そう、局面での最終勝負シーンにおけるボールがないところでの攻防。
ところで・・
そんな局面(最終)勝負シーンでの「小さなトコロの攻防」が、常に、攻守それぞれに勝者と敗者を輩出することは言うまでもない。
そのなかで、もっとも学習コンテンツが充実している(!?)守備における「敗者」を対象に、イメージング(最終勝負イメージの脳内描写)と意志のエッセンスを探ることにしたわけだ。
ボールがないところでの「究極のだまし合い」ともいえる「小さなトコロ」での攻守のせめぎ合い。
そこで、結果としての「敗者」になったとしても、それは、守備にとっても、攻撃にとっても、とても意味のある学習機会なのだ。それは・・
あっと・・、またまたディスカッションが広がってしまいそう。
どうも、語りはじめたら、時として、ディベート論旨の膨張が止まらなくなってしまう。
それだけ、サッカーにおけるグラウンド上の現象には、ものすごく多くの攻守(戦術)や心理ファクターが、同時に、そして複雑に「絡み合っている」ということだね。
あっと・・またまた・・フムフム・・
■そして、イメージトレーニングという本題に入っていくわけさ・・
二回にわたる「小さなトコロでの攻防」というテーマだけれど、それは、攻守にわたる、ボールがないところでのプレーの「量と質」とも言い換えられそうだ。
そのなかで、「量」ではなく、雌雄を決する瞬間的なディフェンスの「質」に、それも失敗やミスにスポットを当てることで、イメージトレーニングの内実を探ろうというわけだ。
そこでは、視覚から入っていく「刺激」によって、戦術的なイメージング(≒最終勝負イメージの脳内描写)能力の進化&深化を目指す。
そこで使われる、具体的なビデオ映像データだけれど・・
それは、このコラムを通してディスカッションしている、失点につながるようなマーキングやカバーリングの「失敗やミス」に焦点を当てたモノだ。
そう、失敗やミスを認識しなければならないという刺激。
イメージング(最終勝負イメージの脳内描写)や、実行する意志(勇気)が足りないことで起きる、ボールがないところでのディフェンスの失敗(ミス)である。
だからこそ、その心理バックボーンを強化するためにも、ビデオ映像データによって(自分自身の!?)守備での失敗やミスのシーンを繰り返し確認する(刺激を受ける!)プロセスが、とても重要な意味をもってくるというわけだ。
ところでビデオ映像データだけれど、前述したように、それは、強烈な刺激がともなうように、効果的に編集されていなければならない。
要は、次の改善へのモティベーションをアップさせられるだけの効果的な内容になっていなければならないということだ。
例えば、スローモーションの組み合わせシーン。例えば、自分や相手の表情や視線までも確認できるようなズームアップ画像。例えば・・、例えば・・
編集内容については、具体的な目的をしっかりと意識し、スタッフ総出でディスカッションすれば、様々なアイデアが湧き出してくるはずだ。
そう、選手たちにとって、これ以上ないほどの「冷や汗の刺激」にするという目標イメージをもって編集作業に取り組むのである。
■冷や汗の刺激・・
そのビデオ編集がうまくいけば、選手たちは、より主体的に考え、より積極的に自分なりの工夫(≒ディフェンス連動性にとってポジティブな自己主張!?)に取り組むようになるだろうし、チーム内にも、その前向きな姿勢によって、創造的な雰囲気が充満しはじめるはずだ。
もちろん、具体的なビデオ内容によっては、対象になる選手だけを呼び出す個別ミーティングにすべきケースもあるだろうし、チーム全体への総括的な刺激として活用することもある。
私は、フットボールネーションで活躍するプロの猛者連中が、ものすごく繊細にビデオを編集し、それを、心理&戦術マネージメントに活用している内情を知っている。
ヤツらは、選手たちが嫌がっても決して屈せず、(後述するけれど・・)しつこく、もちろんポジティブな心理マネージメントも巧みに駆使しながら(どんな失敗シーンにも、ポジティブ要素はあるものだ!)、繰り返し認識させることで、より前向きに考えさせるのだ。
また最近では、様々な統計数字だけじゃなく、それを具体的なグラウンド上の戦術シーンとコラボさせることで、より深く、選手たちの「納得と改善意欲」を引き出せるなど、イメージトレーニング(心理プロセス!)自体も、大きく進化している。
監督コーチは、インテリジェンスと、心理・精神的な「粘り強いマネージメントスキル」を持ちあわせているだけじゃなく、様々な「科学的ノウハウ」にも精通していなければならないのである。
そして・・
■失敗(ミス)とそのエッセンスを体感させる実践トレーニング・・
このタイトルの底流には、「次」につながる失敗の体感をフェアに積み重ね「させ」、そのエッセンスについて主体的に考えさせることこそが効果的トレーニング・・というポリシーがある。
それは、世界トップの「現場」が、長い時間をかけて培ってきた経験則でもある。
そのためにも、選手たちが、前段階のイメージトレーニング(ミーティング)を経て、「コーチの鼻を明かしてやる!」と、前向きにトレーニングに取り組む「積極プレー姿勢」をモティベートすることにも大事な意味がある。
そう、ディフェンス勝負での失敗やミスのシーンが脳内に刻み込まれた状態でグラウンドに立ち、それを今度は、監督コーチの「褒め言葉」に変えてやる・・という健全なモティベーション。
監督コーチは、事前のイメージトレーニング(ビデオ編集データを駆使したミーティング!?)において、小さなトコロの攻防を左右する「勝負ファクター」について詳細に説明する。
マーキングやカバーリングの狙い目、相手が狙うスペースのマネージメント、相手ボールホルダーの意図の見極め、等など・・。
そして次に、実践トレーニングでは、トレーニングの形式をアレンジし、より難しい状況にもチャレンジしていくこと「にも」言及しておく。
そう、実際のトレーニングでは、実戦と同様に、具体的な「状況設定」に、様々なバリエーションを加えていくのだ。
だからこそ、失敗(ミス)とそのエッセンスを体感させる実践トレーニング・・というわけだ。
そして選手たちは、設定状況の変化に応じて具体的アクションを工夫しながら、グループ(守備)戦術としての「連動性」を高めていくことにトライするというわけだ。
■例えば・・
相手チャンスメイカー(ボールホルダー)が、フリーでヴァイタルエリアに侵入してくるというシチュエーション。
最前線(味方の最終ライン付近)には、少なくとも二人のフォワードが、縦横にポジションチェンジしている。
そして、それに加え、後方から、ボールホルダーを追い越して決定的スペースへ走り抜ける「3人目、4人目のフリーランナー(フィニッシャー!?)を設定したりするというわけだ。
それは、ディフェンダーが、臨機応変に、仲間との連動ディフェンスの機能性を高める工夫を凝らさなければならないという意味で、とても効果的なトレーニングだ。
もちろん彼らは、何度も失敗を繰り返す。
そして、互いに声をかけ合うことで、主体的に連動ディフェンスの機能性を高めることにトライするのである。
もちろん、前回コラムで取り上げた「クロスボールの勝負シーン」も同様だ。
そう、ディフェンダーへ(その眼前スペースへ!)鋭く向かっていくような最終勝負クロス。
その状況で、監督やコーチは、ゴール前で待ち構える相手フィニッシャーの「動き」に、様々なバリエーションを加えていく。
例えば、(前回の例示のように!)相手フォワードに、背後ゾーンから、ディフェンダーの眼前スペースへ飛び出させたり、ニアポストゾーンから背後スペースへ「下がる」ことで、ディフェンダーの「勝負イメージ」を攪乱したりする。
そんな「最終勝負のワナ」には無限のバリエーションがある。
そこでディフェンダーは、何度も失敗を繰り返しながら、価値ある「体感」を積み重ねていくというわけだ。
そう、イメージング能力と、自信と確信に裏打ちされた強烈な「アクション意志」を活性化させるために。
■そこでは監督コーチの心理マネージメントのウデも試される・・
次の進化にとって重要な意味を内包する、失敗やミスの再認識。
もちろんそれは、ネガティブな感覚が先行する心理状態だろう。
そんな状況から、選手たちの意識と意志を、リスクにも主体的にチャレンジしていく前向きなモノへと高揚させられるどうか・・
そこでの心理マネージメントにこそ、監督コーチのウデの本質が見えてくるのである。
例えば、失敗やミスによって「熱くなっている」選手たちとの対峙・・
そこでは、監督(コーチ)と選手との「パーソナリティーのぶつかり合い」だって頻発する。
もちろん、そんな「ぶつかり合い」もまた、(うまくやれればのハナシだが・・)監督やコーチと選手たちとの、個人事業主同士の(プロとしての)信頼関係の醸成へつながる(!?)、有意義な「心理マネージメントツール」として活用できるかもしれない。
「怒り」などの人間心理のダークサイド(本音)でのぶつかり合いをポジティブに乗り越えられてこそ、「人間性の交流」というレベルまで信頼関係を深められるだろうから・・。
そんな、様々な意味合いで、効果的な心理マネージメント機能(その可能性!!)も内包する(!?)小さなトコロの(ギリギリの!?)攻防トレーニング。
もしかしたら、監督コーチにとって、それほど魅力的な学習機会は、他にないかもしれない。