The Core Column(44)_攻撃における目的と当面の目標イメージ_そして、「組織」と「個」のバランス_モデルは香川真司

■攻守の「目的」と、当面の「目標イメージ」

お恥ずかしながら、このところ、チト「やる気」が減退気味で、コラムのアップがままならない。

やる気・・

もちろん、考えをめぐらせ、そのコンテンツの一端を整理してコラムに落とし込めるための「セルフ・モティベーション」のことだけれど、どうもうまく高揚させられないのだ。

もちろん、皇后杯はスタジアム観戦するつもりだけれど・・。

今は、以前から録りためておいた内外のゲームを観ながら、また、内外の言説を読みながら「充電」しているつもりなのだが、それが、どうもうまく「やる気」のアップにつながらない。

何か、新しいコト(戦術的な発想やメカニズムの理解・・等など!?)を探索している!?

いや、グラウンド現象のバックボーンにある「基本的な戦術発想や戦術メカニズム」で、まったく新しいモノなんてあるわきゃない。

攻守の目的は、普遍。そう、相手からボールを奪い返すこととシュートを打つこと。

ゴールを入れたり、守ったりするというのは、単なる結果にしかすぎないのだ。

でも、その「目的」に至るまでの(グループ&チーム戦術的な!)プロセスは、プレイヤー個々の才能や監督のアイデアなどによって、まさに千差万別。そして、そのことが、サッカーでは、同じ現象は二度と起きないと言われる所以というわけだ。

ところで、そのプロセスだけれど・・

■例えば、守備では・・

互いのポジショニングバランスの調整と、相手ボールホルダーへのアプローチ(寄せとかチェイスといった相手プレーを制限するアクション!)がスタートライン。

それを絶対的ベースに、周りのチームメイトたちが、インターセプトや相手トラップの瞬間を狙ったアタック、はたまた協力プレスへの連動アクションやボールから遠いサイドでのマーキング等など、さまざまな守備プレーを、有機的に連動させていくっちゅうわけだ。

まあ、バルサやバイエルン(ペップのチーム!)、レーバークーゼン(ロジャー・シュミットのチーム)といった、世界最高峰チームの場合は、志向するチーム戦術とその機能性にも特徴がある。

彼らは、相手にボールを奪い返される「だろう」瞬間を想像し、素早い攻守の切り替えから、ガンガン「その場」から協力プレスを仕掛けてボールを奪い返し、ショートカウンターをブチかます。

ドルトムントでは「Gegen Press」なんて呼ばれるけれど、ボールを奪い返した相手が、「さ~行くぞっ!」と前へ重心がうつった「次の瞬間」に再びボールを奪い返すことほど、最高のショートカウンターチャンスはないっちゅうことだ。

とはいっても、もしその「カウンター・プレッシング」を外されたら、大変だ。そのときは、相手攻撃のスピードを何とかダウンさせながら、守備の組織を作り直さなきゃいけない。

そして、互いのポジショニングバランスを調整したり、協力プレスの環を作るなど連動イメージをシンクロさせながら、次のボール奪取を狙うわけだ。

守備でこそ、組織(イメージ)コンビネーションを機能させなければいけないというのも頷ける。

基本的には「受け身」にプレーせざるを得ないディフェンス。

でも、ポジショニングバランス、アプローチやプレッシング等など、どのようにボールを奪い返すのかというプロセスイメージを「有機的」に連動させられれば、守備を、限りなく「能動的」なモノへとレベルアップさせられる。

そのことが言いたかった。

でも、攻撃では・・

・・ということで、チト前段が長くなってしまったけれど、このコラムでは、守備のメカニズムではなく、攻撃での「組織と個のバランス」というテーマを採りあげたいと思っているワケだ。

■組織コンビネーションと個人勝負プレーのバランス・・

私は、シュートを打つための当面の目標イメージは、「スペースを攻略することにあり・・」って表現することにしている。

要は、ある程度フリーでボールを持つ「仕掛けの起点」を作り出すっちゅうことだ。

その「起点」さえ出来れば、そこから、ドリブルシュート(個人勝負)へチャレンジしていもいいし、そのドリブルで相手の視線と意識を引きつけ、最後の瞬間 に、別の決定的スペースへ走り込む「3人目や4人目のフリーランナー」へラストパスを送り込むような、美しい最終勝負コンビネーションだって成就させられ る。

もちろん、シュートへ至るまでの現実的なプロセスは、そんな個人勝負プレーと組織コンビネーションが、微妙に集約した結晶なんだけれどサ。

あっと・・またディスカッションがズレそうになった。ここでの骨子テーマは、スペースを攻略して「仕掛け(最終勝負)の起点」を演出するための、組織プレーと個人勝負プレーのバランスだった。

ということで、そのプロセスに関するディスカッションへと入っていく。

言うまでもないことだが、スペースへ入り込んでいくためには、ドリブルで相手を抜き去ってもいいし、パスコンビネーションで相手のウラを突いていってもいい。

ただ、組織コンビネーション「だけ」や、個のドリブル勝負「だけ」をもってチャレンジするのでは、相手ディフェンスに予測され、効果的に対処されて止められてしまうのがオチだ。

「そこ」なんだよ、このコラムで協調したかったことは。

繰り返しになるけれど、組織コンビネーションと個人の勝負プレーを効果的にバランスさせられて初めて、相手ディフェンスを翻弄し、スペースを突いていくような優れた最終勝負をブチかましていけるものなんだ。

■そして、香川真司というテーマへ・・

さて、ここからは、具体的なモデルにご登場願うことで、ディスカッションを深めていこうと思う。そう、このところ、チームメイトとの「イメージ的な連動性」に問題をかかえている香川真司。

ブンデスリーガ前期の最終マッチ、アウェーでのブレーメン戦。

そのゲームで香川真司は、久しぶりに後半から登場した。でも、やっぱり、うまく仕掛けの流れに「乗って」いけず、効果的な最終勝負をリードするまでには至らなかった。

それだけじゃなく、この大事なゲームで、二つも、決定的シュートを外してしまった。

もし「あの」二つのチャンスの一つでも決めていたら、状況は、大きく好転しただろうに・・。

ところで、仕掛けの流れにうまく乗り切れない・・という現象。

原因は明らか。それは、香川真司のボールに触る回数が、かなりダウンしていることだ。

アイントラハト・フランクフルトの長谷部誠も、こんなニュアンスの内容をコメントしていたっけ。

・・シンジのトコロに、うまくパスが回されてこない・・

逆に、香川真司に、ボールが集まってくれば・・。

そうなれば当然、彼を中継してボールが動き、最後は、再び香川真司にボールが収まることで「仕掛けの流れ」が効果的に加速するだろう。

でも今は、「そんな状況」を作り出せていない。

それは、何といっても、「今の」ドルトムントでは、「個の勝負プレー」が、より強調される傾向にあるからだ。

スペースを攻略していくプロセスが、個のドリブル勝負が主体になり過ぎている!?

たしかに、オバメヤンにしても、ムヒタリヤン、インモビーレ(ラモス)にしても、「個の勝負イメージ」が先行し過ぎている。多分それには、負けが込んでいるという心理的なプレッシャーもあるんだろうな。

だから、ゴリ押しの個人勝負という「近道」に奔ってしまう。本物のチームゲームであるサッカーでは、「急がば回れ・・」という組織コンビネーションサッカーを絶対的な基盤にすることこそが正解なのに・・。

そして、(香川真司が)最終勝負コンビネーションの起点になろうと、スッとスペースへ入り込んで足許パスを待っても、そこにボールが回されるケースが少なくなる。

最終勝負ゾーンで(それもスペースで!)ボールを持ったときの香川真司は、とても効果的なプレーをする。

組織コンビネーションをリードするプレーにしても、仕掛けのドリブルにしても、はたまた自分自身がワンツーで抜け出してシュートまでいくプレーにしても。

でも、そんな決定的タイミングで、彼にボールが入ってこないのだ。

彼がドルトムントに復帰した当時は、そのプレーイメージを知るマルコ・ロイスがいた。

ロイスに対するチームの信頼は厚いし、彼自身も香川真司を信頼しているから、香川真司を中心にした組織コンビネーションも、うまく機能していた。でも今は、その頼みのロイスもケガで戦線を離脱してしまっている。

■組織プレーの加速装置・・

私は、香川真司のことを、組織プレーの「加速装置」なんて表現することがある。このテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」をご参照あれ。

とにかく香川真司にとっては、人とボールが活発に動くことが、とても大事なのだ。それが・・

そう、今のドルトムントでは、その組織コンビネーションが、うまく機能せず、個の勝負プレーばかりが前面に立ち「過ぎて」しまう。

こうなってしまったら、香川真司の「持ち味」が活きてこないのも道理だ。何たって、彼は、本物のドリブラーじゃないのだから。

本物のドリブラー。

それは、屈強でスピードのある本場ディフェンダーを、止まって正対した状況から、フェイントやスピード、はたまたパワーを駆使して「置き去り」にしてしまうような選手たちのことだ。

でも香川真司は、そんな本物のドリブラーではない。だからこそ、人とボールの「動きの内容」が、とても重要な意味を持ってくるのだ。

■ということで、香川真司が、より多く、効果的にボールに触るために・・

「組織サッカーの加速装置」である香川真司の本来のチカラは、ドルトムントの人とボールの動きが活性化し、彼のところにボールが集まれば集まるほど、効果的に発揮される。

彼がボールに多く触れば、そのシンプルで素早く、正確な「球離れ(展開パス)」によって、ドルトムントの「組織サッカー機能性」が、確実にアップしていくはずだ。

もちろん、監督のユルゲン・クロップと膝を交えて話し合うことも必要だろう。彼にしても、いまのドルトムントの問題点は、明確に分かっているはずだ。

でも私は、同時に、香川真司が、チームメイトから「頼りにされる存在になる」ために、目に見える「仕事」を積み重ねることも、とても重要なテーマだと思っている。

そう、目に見える仕事。それは、まず何といっても、攻守ハードワークの量と質のアップだ。

たぶん彼は、自分はスターだと思い上がるような低次元の選手じゃないだろう。「楽して金儲けしよう・・」なんていう悪マインドの選手が、チームメイトからレスペクトされるはずがない。

香川真司は、基本的には「組織プレイヤー」であって、決して、世紀の大天才、ディエゴ・マラドーナではない。

だからこそ、香川真司の、守備と、攻撃でのボールがないところの組織プレーの量と質を、もっとアップさせるべきだと思うのである。

ボールを失った瞬間からブチかましていく爆発的なチェイス&チェックや、攻撃でのボールがないところの動き(フリーランニング)といった攻守にわたるハードワーク。

要は、攻守にわたって「もっと走り回るべき・・」ということだ。

ブラジルW杯。

彼は、自分から、攻守にわたって「仕掛け」まくった。そう、走り回ることで、自分から「攻守の仕事」を、積極的に探しつづけたのだ。

その背景には、チームがうまく機能していないことでのフラストレーションもあっただろう。そのプレー姿勢からは、自分自身に対するモノも含めて(!?)怒りが満ちあふれていたと思う。

彼のプレーに、そんな「貪欲さ」が甦ってくれば、おのずと、チームメイトたちも、香川真司のことを認め、(再び!!)頼りにしはじめるはずだ。

そして彼にボールが集まることで、ドルトムントの組織コンビネーションサッカーも再生していく。

何といっても、彼には、そのチームメイトからの期待に応えられるだけの(レベルを超えた組織プレイヤーとしての!!)才能が備わっているのだから。

そして、苦境にあえぐドルトムントの救世主として、存在感をアップさせていく。

それこそ、組織サッカーの加速装置としての面目躍如じゃないか。