The Core Column(63)_戦友カリオカ(ラモス瑠偉)との対話・・日本サッカーは着実に進化している・・でもネ(その2)・・(2019年7月4日、木曜日)
■でもネ・・やっぱり、個のチカラを、もっと伸ばしていかなきゃ・・
(ゆ)「U20W杯での影山雅永ジャパンとか、トゥーロンでの横内昭展ジャパン、また今回のコパ・アメリカでの森保一ジャパンもそうだったんだけれど・・」
さて、今回は、「個のチカラを伸ばしていくために・・」っちゅうテーマで、対話をすすめていきまっせ。
もちろん・・
中島翔哉、堂安律、南野拓実、そして何といっても久保建英に代表される、本格的な「ドリブラー」が出てきたことで、日本の攻撃が、一回りも、二回りも、危険なニオイを放つようになっている。
でも、そのテーマは、後にして・・
まずは、ボールをめぐる「局面デュエルの内実」というディスカッションから入っていこう。
(ゆ)「たしかに、日本の仕掛けるチカラは、世界にアピールできたと思うよ。でも、局面でのボールをめぐるせめぎ合い、まあ、肉弾戦の局面デュエルだよな。それに関するデータじゃ、日本は下位に沈んでいるんだ」
(ゆ)「カリオカは、いくつかの日本のプロクラブで監督を務めたから、局面デュエルというテーマじゃ、色々と苦労したんだろうな~・・」
そんな話題に、カリオカが反応しないはずがない。
(ラ)「そうなんだよ・・。とにかく、自分から考えたり工夫したりして、いかにうまくボールを奪い返すのかっちゅうテーマは、ものすごく大事なんだ・・」
カリオカがヒートアップしていく。
(ラ)「もちろん、肉弾戦をビビるようなヤツは、誰からも信頼されないでしょ。そんな選手は、いくら上手くたって、チームのモラルをダウンさせちゃうから、監督としても使いにくいよね・・」
ヒートアップ・・
(ラ)「もちろん、無理な勝負を仕掛けてケガをしちゃったら元も子もない。だからこそ、考えるんだよ。次のデュエル状況を予想して、より有利なポジションや体勢から、勝負のデュエルに入っていくとか・・サ」
ヒートアップ・・
(ラ)「でも、初めから、勝負するつもりがなく、何か、アリバイみたいに相手へ寄せていくヤツがいるじゃない。それって、ホントに、チームにとっては犯罪なんだよ・・」
(ゆ)「そうそう、よくいる。上手いだけで、闘わないヤツ」
(ゆ)「だからオレは、カリオカを、心底、頼りにしていたんだ。上手い。でも、汗かきのハードワークにも精を出す。まあ、負けずぎらいっちゅうことなんだろうけれど・・」
この、カリオカの「負けず嫌い」というテーマについては、「グラウンド上で爆発する、瞬間的リーダーシップ」なんていう「コラム」も発表したから、そちらもご覧あれ。
(ゆ)「もちろん、肉弾戦だけじゃなく、スペースのケアに対する冷静な状況判断も大事。マークする相手に、フリーで走り込まれないとかサ。とにかく守備では、フィジカルや戦術イメージといった個のチカラは、やっぱり強い意志に支えられているよな」
(ラ)「そう・・集中力・・」
ここでまた、何かを思いだしたように、カリオカがヒートアップしていくんだよ。
(ラ)「例えば・・。タイミングが遅れたことでイージーに足を出し、PKを与えちゃったり、最後の瞬間に、身体を動かすんじゃなく、これまたイージーに様子見になっちゃったり、現場じゃ、ホントに、アタマにくることばかりなんだ」
(ラ)「あっ・・そんなコトは、湯浅さんも、山ほど知っているよね」
(ゆ)「もちろん・・。だから、守備での個のチカラについては、イメージ作りと、精神的な強さを、我慢強く、鍛えていかなきゃいけないんだ。そう・・意志のチカラ、ね」
(ゆ)「まあ、守備でのハナシは、ここまでにして、攻撃での個のチカラっちゅうテーマに移ろうよ」
(ラ)「うん、そうしよう。攻撃でも、個のチカラを伸ばさなきゃいけないのは同じだからね」
(ゆ)「もちろん・・。ところで、森保一になってから、勇気マンマンに、個人勝負をブチかましていく若いヤツらが増えているよね。それって、チームに勇気をもたらすっていう視点でも、とても価値がある」
(ラ)「そうそう・・。以前の代表じゃ、ドリブル勝負が、少なすぎたんだよ」
(ラ)「また、ドリブル勝負を挑んでいっても、最後の瞬間に、諦めちゃったりする。それって、守備デュエルでも感じられるんだよ。そう、闘う意志・・」
(ゆ)「それってサ、日本の社会体質が影響しているかもしれないよな。たとえば、失敗したくないっていうマインドね。それじゃ、成功なんて望めない」
(ラ)「そう・・。良いチャンスが見えているのに、ドリブル勝負や仕掛けのタテパスじゃなく、横パスやバックパスに逃げるヤツらね」
(注釈:)この、「勇気あふれるリスクチャレンジ・・それこそが、成功を掴むための唯一のリソース・・」なんていうテーマについては、また別立てで語りあいますよ。
(注釈:)ここでは、「個のチカラを伸ばす・・」っちゅうテーマに集中しましょう。
(ゆ)「そんな、攻守にわたる個のチカラ(個人プレーの内実)を発展させるための心理的なリソースは、なんといっても、勇気だよな」
(ゆ)「もし、その勇気が足りない場合、カリオカは、どうするの??」
(ラ)「オレ・・、さっき話した、守備での肉弾戦デュエルとか、攻撃での勝負のタテパスとか勝負ドリブルとかサ、そんなギリギリの危険な勝負から逃げるヤツについては、ダメの烙印を押しちゃうコトの方が多いかな~・・」
(ラ)「そんな選手を闘わせるのは、簡単じゃないからね。まあ、ダメの烙印を押すというよりも、自覚するまで待つっていうのが現実かな」
(ゆ)「まあ、カリオカの、あの勢いで迫られたら、選手は、まずビビっちゃうだろうね。まあ、オレは、もう慣れっこだから気にならないけどサ。へへっ・・(笑)」
(ゆ)「いまカリオカが言った、自覚ってのが、もっとも重要だよな。選手たちが、自分を見つめ直すことで、何かから、心理的にフッ切れ、ギリギリまで闘うようになる。でも、そこに至るまでのプロセスが、とても難しい」
(ラ)「うん・・アグリーだね」
(ラ)「脅したりしてリスクにチャレンジさせても、結局は、ホンモノには、ならないよね。やっぱり、選手たち自身が、自分から気付くことが大事なんでしょ。だから、自覚・・」
(ラ)「でも、そのプロセスってさ、まったく、人それぞれだから、難しいよね」
(ゆ)「そう・・」
(ゆ)「オレ、よく選手と話すじゃない。そんな語り合いで、選手たちの意識を高めようとするわけだけれど、失敗も多かったんだ」
そこで、読売サッカークラブでコーチを務めていたときのハナシになった。
(ゆ)「読売サッカークラブ時代、選手たちの本音を引き出そうと話し合っても、うまくいかないことの方が多かったんだよ」
(ゆ)「そしてサ・・。どうして本音のハナシにならないんだろうか?・・って聞いたら、松木安太郎とか都並敏史なんかに、こんなコトを言われたんだ」
(ゆ)「だって、湯浅さんに一言いったら、100くらいの言葉が、返ってきちゃうじゃないですか。その内容もスゴイから、こちらは黙るしかないでしょ」
(ゆ)「その瞬間って、彼らの本音が聞けたわけだから、コミュニケーション、大成功って喜ぶべきだったけれど、それよりも、自分がしゃべり過ぎだって指摘されたショックが大きかったね」
(ゆ)「まあ、あまりしゃべりたくない、オレの心のキズなんだけれど・・さ」
(ラ)「(へへっ・・ってな微笑みを浮かべながら!?)ふ~ん、そんなコトもあったんだ・・」
(ゆ)「そうなんだよ。まあ、オーバーコーチングは、どちらかといったら害の方が大きいっちゅうことだよな・・」
(ゆ)「そうそう・・。一時期、低迷していたドイツサッカーが、日韓ワールドカップあたりから復調してきた背景だけれど・・」
(ゆ)「そこじゃ、テクニックを進化させるという方針だけじゃなく、選手たちの自覚を高めるという意味で、オーバーコーチングを見直そうっちゅう、隠れたコンセプトもあったんだよ」
(ゆ)「オレは、そんなドイツサッカー再生プロジェクトを観察させてもらったんだ。ものすごく貴重な学習機会だったゼ」
(ゆ)「あっと、蛇足だった・・」
(ゆ)「とにかく、松木とか都並には、そんな本音の意見によって、オレの心理マネージャーとしての自覚が一皮剥けたこと、今では、心から感謝しているんだよ。まあ、その瞬間はショックの方が大きかったわけだけれど・・さ」
(ゆ)「とにかく、人のハナシを聞くことが、実のある対話のスタートラインなんだよな」
(ゆ)「しゃべり過ぎは、百害あって一利なし・・ってなことさ・・」
(ラ)「うん・・。しゃべり過ぎがよくないことは、オレも、よく分かる。でも、やっぱり・・。自分を見つめ直そうとしないしないヤツらは、どちらかといったら、突き放すコトのほうが多いよね」
・・ここからは、カリオカの生い立ちについて、ちょっと触れます・・
ブラジル時代のカリオカは、貧しい家庭で、とても苦労したらしい。
公認会計士の父親が健在だったときは、裕福な家庭だったんだけれど、その父上が急逝してからは、母親が一人で家計を切り盛りせざるを得なくなった。
そのカリオカのお母さん。わたしも何度か会ったことがある。まさに立派な母親(人物)だった。
カリオカは、そんな貧しい家庭と母親を助けようと、必死にプロサッカー選手を目指したんだ。
その努力は、まさに「ハンパない・・」モノだったらしい。
そう、カリオカには、ものすごく具体的な、切羽詰まった「日々の生活」があったんだよ。
だから、積極的に考えたり、トライしようとしない日本人選手が、うまく理解できない・・というか、すべてが自己責任だって突き放すことで自覚をうながす・・という姿勢の背景にあるのかもしれないな。
まあ、「貧困」については、ブラジルと日本じゃ、その内実に大きな開きがあるだろうから・・
そんなカリオカの「ブラジル時代」については、ウィキペディアに掲載されている「ラモス瑠偉」のベージを参照して下さい。
・・あっと、蛇足・・
(ゆ)「そうなんだよな・・。いろいろな意味で、まあ恵まれている日本じゃ、ハングリーな精神を芽生えさせるのは、とても難しい作業かもしれないな」
(ゆ)「まあ、そのこともあるんだけれど、だからオレは、選手たちの心理的なコーチとして、心理学エキスパートが必要かもしれないって思うんだよ」
(ゆ)「もちろんヨーロッパでも南米でも、多くのクラブで心理学者が活躍しているよね」
(ラ)「そうそう・・それは確かにそうだね」
(ゆ)「だから、日本でも、そんな心理学エキスパートに、いろいろな心理マネージメントを任せることも選択しに入れてもいいって思うんだ」
(ゆ)「とはいっても日本じゃ、自己主張のカタマリであるフットボールネーションとは、その心理マネージメントの内容が、かなり違ったモノになるんだろうけれど・・」
(ラ)「そうそう・・。日本じゃ、自覚を高めたり、落ち込んだ選手を励ましたりするような、モティベーターとしての仕事がメインになるんだろうね」
(ゆ)「でも欧米じゃ、ヒエラルキー構造を監視したり、チームワークに対する心理を強化したりするとか、プロ選手たちの強烈な自己主張を、うまくバランスさせることに力点を置くんだ」
(ラ)「でも日本じゃ、その逆で、より強く自己主張できるようにモティベートする」
(ラ)「そのことで、より集中して守備に入れるようになるし、攻撃じゃ、勇気をもって、リスクにもチャレンジしていけるようになる・・とかね。あっ・・自覚か・・」
(ゆ)「日本でも、ドリブル突破とか、ボールをめぐる局面デュエルで、自己主張をブチかませるような強いパーソナリティーが育ってきていると思うよ」
(ゆ)「たぶん、日本サッカーが、外国のサッカー文化と触れあう機会が増えてきたことも大きいんだろうね。昔は、外国人選手とゲームするときは、まず外国コンプレックスと戦うことからはじめなきゃいけなかったわけだから・・」
(ラ)「そうそう・・。だから、能力のある若手選手は、積極的に外国へチャレンジしていくべきなんだよ。そこじゃ、甘えたり、自覚が足りないとか、そんな勘違いした選手は、すぐに追い出されちゃうわけだから・・」
(次からは、サッカーの根源的テーマを語り合います)