The Core Column(52)_美しく勝つために・・「攻守バランスの理想型」を目指す、2種類のアプローチ!?
■前回コラムの発展型ディスカッション・・
前回のテーマは、決定的スペースの攻略と、そのメカニズム(概論)だった。
そこで強調したかったのは、組織的なアプローチでも、個人的なアプローチでも、もちろん「それら」がミックスしたアプローチでも、リスクへチャレンジしていく姿勢こそが絶対的なベースになるということだった。
サッカーが不確実なボールゲームであるからこそ、「自由」を得るために、意識と意志、そして勇気が何よりも大事なのだ。
でも、(特に)プロの場合は・・
そう、そこでは、結果に対する厳しいプレッシャーが付きまとう。
だからこそプロコーチ(監督)は、理想と現実の狭間(はざま)で悩みながら、自分自身に(人間的な弱さに!?)打ち勝つことが求められるのである。
短く・・短く・・。フ~~ッ・・
■「美しく勝つ・・」という根源的な志向テーマ・・
サッカーの「美しさ」については、まさに千差万別の定義があるだろう。
でも私は、「異論反論オブジェクショ~ン!」ってな「ノイズの嵐」などに押し流されることなく、いつものように、自分の主張をブチかますのだ。
ちょっとカッコつけかもしれないけれど(!?)、それは周りの雰囲気(常識と呼ばれる怪物!?)や時流に「さおさす」ことのない独立独歩の創作姿勢などとも表現できるかな。へへっ・・
とにかく、そんな創作(プレー)姿勢を無くしたら、筆者の存在価値・意義(レゾンデートル)も、まさに地に落ちちゃうからね。
そういえば、ニーチェが、こんな格言を残したっけ。
「金を無くしたら、また稼げばいい・・名声を無くしたら、回復させられるように努力したらいい・・でも勇気を無くしたら、生まれてきた価値がない・・」
フムフム・・あっ、と・・
ということで、美しく勝つというテーマ。
私は、その絶対的ベースが、個人プレーでも組織プレーでも、攻守にわたって、リスクを怖がったりしない、強い意志にあふれたチャレンジャブルなプレー姿勢にあると思っているのだ。
例えば、個の才能がベースの単独ドリブル勝負。
ときとして、人々の心を奪うほど美しく、魅力的なドリブル勝負。それが、サッカーの美しさを演出する、とても大事なファクターの一つであることは論を俟(ま)たない。
でも私は、サッカーには、そんな個の勝負プレーだけじゃなく、組織的な攻撃や守備にも、美しさのリソースが満載だというコトも主張したいのだ。
例えば、3人目、4人目の「ボールがないところでの創造的な動き」。それらが詰め込まれた、ダイレクトパス・コンビネーションによる「決定的スペースの攻略」である。
ここで使った、ボールを止めない「ダイレクト」でのパスやシュートについては、「このコラム」を参照していただきたい。あっと・・蛇足。
また、例えば守備では、忠実なチェイス&チェックを「イメージ基盤」に、そのハードワークにシンクロするようにブチかます美しいインターセプト。
ところで、サッカーにおける美しさの源泉としての「個の才能」だけれど・・。
そこには、もし「才能プレイヤー」が、攻守にわたるハードワークに「も」フルパワーで取り組んだら、彼らがブチかます個人勝負プレーだけじゃなく、チーム全体の組織サッカー自体の「美しさや魅力」も大きく増幅されるという事実が隠されているのだ。
そして、そんな「才能ハードワーク」による組織力のアップにともなって、連動ディフェンスだけじゃなく、攻撃では、組織(ダイレクト)コンビネーションと単独ドリブル勝負がうまく組み合わせられることで「仕掛けの変化」が生まれ、美しさも倍増する。
前述した「チャレンジ意志」には、もちろん、攻守にわたるハードワークを、主体的にブチかましていくというプレーコンテンツも含まれるのだ。
だからこそ私は、サッカーにおける「美しさ」の根源的なリソースが、チャレンジングな「意志」にあると定義するのである。
ちょっと具体性に欠ける!?
でも、サッカーじゃ、同じ局面シーンは二度と起きないわけだから、ここで「具体的な5秒間のドラマ」を描写するのは止めにしますよ。
それよりも、攻守にわたる、「リスクチャレンジへの意志」が、サッカーが不確実であるからこそ、その魅力と「美しさ」の、もっとも重要なリソース(源泉)だという主張の方が大事。
そんな「プレー姿勢」さえあれば、いくら(チーム全体が擁する!?)個の才能レベルに限りがあったとしても、観る人々に感動を与えられるものなのだ。
そして人々は、そのサッカーを、美しいと感じ、現場にとっては、「美しく勝つ・・」という普遍的テーマの成就に近づいていけるのである。
そのコトが言いたかった。
■そして本題に入っていく・・そう「バランス」というテーマ・・
「バランス」という表現には、様々なコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されている。
・・攻撃と守備のバランス・・リスクチャレンジと安定志向のバランス・・選手タイプのバランス・・ポジショニングのバランス・・等など・・
でも、あまりディスカッションを広げずに・・例えば・・
グラウンド上の現象を観ていて、「バランスが上手く取れているな~・・」なんて感じられるシチュエーションがある。
その典型は、守備ブロックが、落ち着いて組織バランスをキープし、相手の攻撃を、余裕をもって受け止められている状況だろう。
もちろん、相手に、スピーディーな(ショートも含む!)カウンターを喰らわされたときは、まさにパニック対応ってなことになるわけだけれど、そこで相手カウンターのスピードをダウンさせられれば、直ぐにバランスを再構築できる。
でも、そんなバランスの取れた守備ブロック状況を「常に」整えておくような「安定志向」に重きを置きすぎたら、次の攻撃における課題が大きくなってしまう。
そう、優れた攻撃を繰り出していくための絶対的なバックボーンである「リスクチャレンジ姿勢」が、抑制されてしまう可能性が大きくなるのである。
要は、優れた攻撃(美しいサッカー!?)を仕掛けていくためには、自ら、積極的にバランスを崩すようなリスクにもチャレンジしてしていかなきゃならないということが言いたかったわけだ。
フ~~ッ・・
■美しく勝てる「攻守バランスの理想型」を模索していく二つの方向性!?・・レッズとサンフレッチェの場合・・
私は、優れた「バランス」を目指してチームを作るとき、原則的に、二つの方向性(考え方)があると思っている。
一つは、攻撃において、積極的に(前後の人数&ポジショニングの!)バランスを崩しながら人数を掛けていくような「リスクチャレンジ」を志向し、そのなかで、しっかりと守備に戻ることで、全体的な「バランス」を高揚させていくタイプ。
選手たちは、まず、守備での組織バランスを素早く再構築できるように(!)、瞬間的な攻守の切り替えから、まさに全力で、相手の仕掛け(カウンター)のスピードをダウンさせる。
だからこそ、強い意志をベースにした素早い攻守の切り替えと、走ること(=全力の汗かきスプリント!)が、根源的に重要なファクターになるというわけだ。
まさに、そのポイントに、イビツァ・オシムのサッカーが今でも高く評価されていることのバックボーンがあるというわけだ。
そんな、「より活発」なリスクチャレンジを基盤にした攻撃的サッカーに対し、攻撃に移ったときでも、次の守備をイメージしながら「人数とスペース攻略プロセス」を注意深くマネージする(初めからバランスさせておく!)ような、安定志向のタイプがある。
このタイプのチームは、常に、カウンター攻撃を、まさに「猛禽類の眼」でシャープに狙いつづけるというわけだ。
ここで、「J」の昨シーズン(2015年シーズン)に目を移してみよう。
そこでは、(一番エラク、歴史に残るべき!)年間勝ち点チャンピオンの座をめぐり、他クラブの追随を許さない「数字的な内容」で、二つのチームが、しのぎを削った。
そう、サンフレッチェ広島と浦和レッズ。
年間を通した勝ち点チャンピオンが、一番エライ(いや、エラクなきゃいけない!)というテーマについては、以前発表した「このコア・コラム」をご参照アレ。
私は、このデッドヒートを繰り広げた2チームについて、前述した2種類のチーム戦術的コンセプトに(総体的な傾向として!)当てはめるとすれば、サンフレッチェ広島が後者で、浦和レッズが前者・・なんていう「構図」が成り立つのかもしれないと思っている。
言わずもがなだけれど、後者の方が、勝負に強い。とても、強い。そのことは、サンフレッチェが証明している通りだ(この、コア・コラムをご参照アレ)。
逆に、前者は、相手のスピーディーなカウンター等(!)に沈められてしまう危険性が増大する!?
■私は、リスクチャレンジを「より」前面に押し出して「美しく勝つ」ことを志向する方が好きだ・・
ということで、ここからは、筆者自身の「主張」を展開していく。
前述したように、浦和レッズのミハイロ・ペトロヴィッチは、バランスを「敢えて」崩していくようなリスクチャレンジあふれる攻撃サッカーをベースに、美しく「バランスの取れた」サッカーを志向している。
とはいっても、もちろん彼にしても、臨機応変な「修正」が不可能になるような「やり方」は本意ではない。それじゃ、まさに「蛮勇」になってしまうからね。
そうではなく、彼にしても、中盤に「大人のバランサー」を設定するとか、様々なタイプの「ペア」を組み、一人が上がったら、必ず、その相棒は下がっている・・とか、様々な「リスク・ヘッジ」の方策を練っているんだよ。
でも、ボールを失った状況や、相手にレベルを超えたスピードのあるアタッカーがいるようなケースでは、崩れたバランスを、素早く、効果的に「復旧させる」のが、とても難しくなるのも確かなことだ。
だから、ガンバのパトリックとか、サンフレッチェの浅野拓磨といった、「超特急スピードスター」に一発タテのカウンターを決められちゃったりするようなケースも出てくるわけだ。
ここからが、このコラムの骨子ということになる。
それは、「美しく勝つ」という理想型を、高い次元で実現するためには、やはり、相応のリスクを負わなきゃいけない・・という事実だ。
誤解を避けるために断っておくけれど、決してサンフレッチェが、石橋を叩いても渡らないような発展性のない「リアクションサッカー」をやって成功した・・なんてことを言っているわけじゃない。
彼らにしても、「ステディーな守備ブロック」を基盤に、一発カウンター(The Hiroshima !!)だけじゃなく、人数をかける組織的なスペース攻略(仕掛け)プロセスでも、魅力的なコンテンツを提示できるようになっているんだ。
そのディスカッションについても、「強いサンフレッチェ・・」というテーマで書いた「このコラム」を参照して欲しい。
ということで、今回のコラムでディスカッションしたかったテーマの骨子は、理想的な「攻守バランス」の達成を志向していくプロセスには、二つの異なったアプローチがある・・というコトだ。
もちろん筆者は、チーム全体の「攻守ハードワーク」の内容を最大限に活性化し、全員が、リスクへチャレンジしていく「意志」を高揚させつづけるなかで「攻 守バランスの理想型」を志向していくような、ミハイロ・ペトロヴィッチの(浦和レッズの!)ダイナミックな攻撃サッカーというアプローチが好きだ。
でもサンフレッチェだって、異なったタイプのアプローチで、いまの「高質なバランス・サッカー」を築き上げつつあるじゃないか。
とにかく、今シーズン(2016年シーズン)を、そんな「視点」でも観察することで、スタジアム観戦の楽しみが倍増する・・っちゅうことが言いたかった筆者なのであ~る。
へへっ・・