The Core Column(49)_日本代表・・ゼロトップとワントップを(一つのゲームのなかで!?)併用することによる「仕掛けの変化」・・(2015年11月11日、水曜日)

■クリエイティブなムダ走り・・

「イイネ~、ヨシ・・日本には、あんな、テクニックのあるハードワーカーが溢れているのかい?」

友人のドイツ人エキスパートに尋ねられた。

そんなワキャ、あるはずネ~だろ。でも・・

ちなみに、「ヨシ」とは、武藤嘉紀のことだ。

「そうだな~・・たしかに、ドイツと比べたら割合は多いかもしれないな・・生活文化の違いとでも言うのかな~・・でも、ブンデスリーガに、そんな日本選手が多いのは、日本に詳しいドイツのスカウトが優秀だからなんじゃネ~か?」と、わたし。

「そういうことか~・・とにかく日本人プレイヤーについては、オクだけじゃなく、ハセベもそうだけれど、当たり前のようにハードワークにも全力を尽くすっていうイメージはあるよな・・」と、そのドイツ人エキスパートがつづけた。

ちなみに、「オク」とは、日本人最初のプロ選手として、(西)ドイツのサッカー史に残る活躍を魅せた奥寺康彦であり、「ハセベ」とは、言うまでもなく長谷部誠のことだ。

まあ、一概にハードワークといっても、そこには、「攻守の真の目的」を、より実効あるカタチで達成するためのインテリジェンスと意志というテーマもある。

それこそが絶対的バックボーンなのだ。

彼らは、ボールを奪い返すため、そしてシュートを打つため(スペースを攻略するため!)に、「今この時点で何をすべきなのか・・」というテーマを常に自問自答しながら、瞬間的に「次のアクションイメージ」を描きつづけているんだよ。

私は、そんな「積極的イメージング能力」に支えられた攻守ハードワークを、真の、「クリエイティブな(創造的な)ムダ走り」と呼ぶ。

■それにしてもスゴイね~、武藤嘉紀・・サスガだね~、岡崎慎司・・

マインツに参加した武藤嘉紀。

冒頭で書いたように、ドイツのエキスパート連中にも、すこぶる評判がいい。

その絶対的ベースは、もちろん、ストライカーとしての類い希なる「才能」だ。優れたトラップ&コントロール能力、ドリブル&パス&シュート能力(決定力!?)・・などなど。

そしてドイツ人エキスパート連中は、その「才能」を、余すことなく「発揮させられる」絶対的バックボーンとしての攻守ハードワークの量と質「も」、同時に高く評価しているというわけだ。

相手にボールを奪われた次の瞬間からスタートするディフェンス。武藤嘉紀の「脳内イメージング機能」は、決して休まない。

・・どのようにボールを奪い返すのか・・どのように味方にボールを奪い返させるのか・・その目標を達成するために、いま自分は何をすべきなのか・・

それこそが「真のイメージング能力」であり、それがあるからこそ、自然な流れとして、彼の守備アクションが「全力ダッシュ」で満たされていくのである。

爆発スタート&フルスプリントは、自ら描くイメージを「成し遂げたい!」という強い欲求があるからこそ出てくる「グラウンド上の現象」なのである。

そして、そんな汗かきハードワークがあるからこそ、次の攻撃でも、より忠実に、そして効果的に、ボールがないところでのアクション(パスレシーブのフリーランニング)を繰り出していけるというわけだ。

そのプロセスがなければ、いかに素晴らしい才能に恵まれていたとしても、宝の持ち腐れ・・ということになってしまう。

フ~~ッ・・

また、プレミアのレスターへ移籍した岡崎慎司。

彼もまた、攻守ハードワークの権化である。

彼は、それを絶対的ベースに、(武藤嘉紀と同様に!)ドリブルやパスコンビネーション、シュートポジションへ入り込むイメージング能力、そしてゴール決定力を磨き上げることで世界トップグループにまで上り詰めようとしている。

フットボーラーとしての「才能レベル」からすれば、彼が「ここまで」キャリアをアップさせられたことに敬意を抱かざるを得ない。

■ということで本題・・そう日本代表の前戦ブロック(仕掛けの内実)・・

ハリルホジッチは、日本サッカーの内実を、しっかりと把握しているということなんだろうな。

だからこそ、典型的なターゲットマンの設定を「二次的な可能性」として考えはじめている!?

そう、いまの日本サッカーには、「釜本邦茂」は、いないのだよ。

そして、だからこそ、「ゼロトップ」というチーム戦術的な発想に傾いていると思うのだ。そのことは、今回の代表メンバー構成を見ても明らかだろう。

そこでの前線ブロックの(まあ、四人)機能性だけれど・・

たしかに、基本的なポジション(役割)のイメージは与えられるだろうが、彼らは、「そこ」に居座るのではなく、ダイナミックにポジションを変えながら、素 早いコンビネーションや、タイミングを見計らった局面ドリブル勝負などを駆使してスペースを攻略し、最後は、ドリブル突破やスルーパス、鋭いグラウンダー クロスなどで最終勝負をブチかますのだ。

もちろん、そんな攻撃ブロックの機能性をマネージするのは、チームの重心とも言えるダブルボランチ。

まあ今は、言わずもがなの長谷部誠と山口螢。

彼らがいるからこそ、両サイドバックも積極的にオーバーラップしていける。

もちろん状況が許せば、ダブルボランチの一人が、まさに「忍者」のように後方から忍び上がって攻撃の最終シーンに活力を注入したりする。

そして相手の守備ブロックは、そんな「変化」に富んだポジショニング(対峙する敵の顔が常に違う!)や仕掛けのバリエーションに惑わされ、組織の「バランス」を崩していくというわけだ。

■でも、ターゲットマン(ワントップ)を設定できないわけじゃない・・

そう、言わずと知れた、本田圭佑。

彼の、タテパスを素早く正確にトラップ&コントロールし、相手の厳しいマークのなかでも、しっかりとボールを動かしながらキープする能力(タメ=ポストプレー=の能力!)は、抜群だ。

だからこそ、そこから危険なラスト(スルー)パスやラストクロスを「期待」できる。

この、「期待できること」こそが、仕掛けプロセスを活性化させために、もっとも重要なファクターなのだ。

そう、周りのチームメイトたちの「ボールがないところでの動きの量と質」をアップさせる大いなるモティベーションである。

それだけではなく、本田圭佑は、シュートやヘディングにも長けているし、その決定力は比類なきレベルにある。

そう、彼は、いまの代表メンバーのなかでは唯一と言える、世界に抗していけるレベルの「万能タイプのターゲットマン」なのである。

■考え方によっては、日本代表のオプションは広い!?・・攻撃の変化という発想・・

そのように状況を俯瞰(ふかん)すると、日本代表が選択できる仕掛けプロセス(攻撃ブロックのやり方イメージ)のオプションは、広いじゃないか。

冒頭で述べたような、高質なインテリジェンスと意志に支えられる攻守ハードワークを絶対的ベースに、攻撃ブロック全体が流動的に動き回る「ゼロトップ」。

武藤嘉紀と岡崎慎司だけじゃなく、そこには、ドルトムントに返り咲いた香川真司もいる。

ところで、香川真司の「返り咲き」だけれど・・

そこには、ドルトムントへの復帰だけじゃなく、パフォーマンスの高揚というニュアンスも含めたつもりだ。

そう、いまの香川真司は、攻守ハードワークにも長けたチャンスメイカーとしても素晴らしい「機能性」を発揮していると思うのだ。

もちろん本田圭佑は、そんな「ゼロトップ」のなかで「も」十分に存在感を発揮できる。

でも彼は、前述したように、ワントップとしても、素晴らしい機能性を発揮できるはず。

そのとき彼は、まさに「イメージング武器」とも呼べる存在にまで昇華できるはずだ。

彼がワントップとして「支点」になることで、彼を取り囲む「ゼロトップ戦術メンバー」のイメージング・コンテンツにも、大いなる広がりが出てくると思うのである。

最後は、ワントップとゼロトップが「ミックスアップ」したような締めになってしまったけれど、理想的なカタチは、言うまでもなく、「ゼロトップ」のやり方と、本田圭佑をターゲットマンにする「ワントップ」の機能性を、一つのゲームのなかで、バランスよく使い分けることだ。

それこそが、相手守備ブロックを恐怖に陥れるような、「もっとも有効な攻撃の変化」じゃないか。